落ち着きをもたらす自然の色を

病院にとりいれる染色のアート

日本生命病院


人工の色が多く、自然物を持ち込めない色の課題に

ケアをにつながる自然の色の染色アートを

 

 一般的に、病院内は、安全管理や衛生面での制約から自然物を遠ざけてしまいます。人工の色に囲まれがちな病院には、自然の色の豊かさが取り入れにくいと課題に感じていました。

 そんな中、いまふくふみよさんの個展で、植物など天然の素材による染色の、鮮やかな色合いや優しい質感に出会い、この自然の色の力をぜひ病院に広げたいという想いが生まれました。2年越しの想いが実現したのが、アートと医療の融合をテーマにされておられる生命病院へのホスピタルアートです。

植物染料は、生きものを伐採してつくります。それを自分の作品のためだけに使うのは違うと思っています。

せっかくの自然の色、力を社会に役立つということがとても大きい、意味のあることだと思います。

                                        いまふくふみよさんより    

タペストリーにもパネル作品にも、植物染料だけを用いたく、また非常に多色で鮮やかな色を用いる予定だったので、新たに植物染料を開発する必要がありました。一般的に耐久性の高い色は、地味めの色が多い。鮮やかできれいな色で染めるのは難しいと言われています。と語るいまふくさんは、数多くの希少な植物、多種の金属媒染剤を試し、サンプル実験を繰り返し、今回の作品のためにも試作を繰り返して下さいました。これらを使用した作品は、化学染料とは異なり、植物染料ならではの豊かな味わいを醸し出しています。

植物染料の染色体験に、一緒におどろき、会話がはずむワークショップ

 

 ひといろプロジェクトのホスピタルアートでは、院内で鑑賞するだけでなく、病院におられる方々への芸術活動に参加をお声掛けします。

 病院の多目的室で、染色のアートづくりのワークショップを開催し、入院中、通院中の患者様や、ご家族様、医療従事の方々に、立場の垣根なく初めての染色体験に、一緒にご参加いただきました。

 素材や媒染の違いによる多種の色見本の中から、自分の好みの色を選び、刷毛(はけ)染め工程を体験します。 ともに手を動かし、知らなかった染色の世界に触れ、コミュニケーション豊かな時間を過ごされて、「病気から気持ちが離れて楽しめた」との患者様のお声もあがりました。

導入への安全性をクリアしつつ、場の用途をアートで変える

 天から吊るす、ゆらぐタペストリーは、設置場所、高さ、部材などさまざまな点から、病院の設備のご担当者と、安全面での検討を重ねつつ設置が実現できました。密度の濃いパネルと対比した柔らかく透ける素材は、空気の流れにゆらぐ、風のような作品となり、自然の色が空間に広がりました。

 また今回のアートには、ただの通路から、本を読み座ってくつろげる場へにしたいとの希望もありました。ゆとりのスペースであることを、アートで伝えるレイアウトを心がけました。

 


作品情報

場所

 日本生命病院

 3階エスカレーター周辺

タイトル

 みんなで優しく織りなす 天然染料のART・ひろがる色

 「回帰する時間  HOSPITAL ART」 

制作

  • 病院の患者様と医療従事者の方々
  • いまふくふみよ(染色・インスタレーション)
  • 廣瀬 貢博(レイアウト) 
  • 川西 真寿実(ディレクション)

参加者アンケート

 回答者:18名(患者さま:3名、ご家族:1名、医師:1名、看護師:3名、MSW:1名、事務:7名、その他:2名)

 

良い/やや良い

このアートの第一印象はいかがでしたか? 94%
自然な天然染料による染色の色味はいかがでしょうか 100%
患者様や医療従事者の方々が創作にご参加された作品を展示することについてはいかが思われますか? 100%
内容やイメージは場に合っていましたか? 88%
このように病院のアートが増えることについてはどのように感じられますか? 100%

※良い/やや良い/普通/やや悪い/悪い で回答

●作品へのお声(抜粋)

  • 彩りができて通過するだけでも楽しく感じます
  • 患者さんが落ち着いた様子で座っているのを見かけるようになった
  • 無機質な空気が柔らかに雰囲気に変わった
  • あたたかみのある落ち着ける空間になった
  • 穏やかな雰囲気が醸し出されている
  • 張りつめていた気持ちが横を通るといい具合にゆるんでホッとします