自然の色に触れられず、まわりの色にかたよりがあり、自分らしさを 反映しにくい生活って、どんなイメージでしょうか?
病院に入院したその日から、患者様には治療優先の日々が始まります。 季節の美の移ろいや、生活の慣れ親しんだ色からも離れ、また、個人の 嗜好や個性が反映できる範囲も変化しがちです。また色彩が心身にもたらす影響が知られるようになってきましたが、医療の場への有効な活用はまだあまり進んでいないようです。
そこで私たちは、様々な課題に「色やアートのちから」で応えたく、少しでも気持ちを楽に前向きにしていただけるよう、医療や福祉の場におられる「ひと」を主役に考えた、ケアにつながる「色やアート」の役立ちを追求しお届けしています。
たとえば、個人の嗜好が二の次になるのであれば、逆に個性に向き合うことが力になるのでは?
病院への自然物の持ち込みがだめならば、自然の色を病院に広げる方法があるのでは?
殺風景な場を豊かにする病院のアートに、制作への参加の機会があれば、患者様の連帯感、達成感につながるのでは?
こうして生まれた「じぶんのいろ」「まわりのいろ」「つなぐいろ」、3つの「いろ」の活動は、 リハビリカラー®️の構築にはじまり、病棟でのワークショップ、ホスピタルアートの制作や、 医療へのアートを考える企画展の開催へとつながってきました。
今ではジャンルを超えた方々との交流を通して、 より深く広い視野で想い合えるよう、社会に広げてゆきたいと感じています。
一見、美術やファッションなどから距離があると感じられる、医療や福祉の分野にこそ 「色やアート」の力をお届けしたい。
色は光がなければ見えません。光が届きにくいところを照らして色を見いだせるように、 想いをつなげてゆきたいと思います。
(c) mugi nakajima (c)TAKA
ひといろプロジェクト代表
川西 真寿実
20年前にレクチャーに参加し、海外の医療へのアートのアプローチや、ホスピタルアートという言葉に出会ったことが、それまでの現代美術やデザインへの興味を、医療、福祉へのアートに広げて考え始めるきっかけとなりました。
その後、私自身の体調の変化や、病に直面した時の周りの人々の様子から、色やアートがいかに医療に活かせるかを確信しました。色彩理論や色彩心理、デザイン、緩和ケアや外見ケアに至る様々な学び「色にできること」を追求してきました。2017年、独自の活動を開始するため、任意団体「ひといろプロジェクト」を設立。翌年、病状による顔色の変化に抗う色彩活用「リハビリカラー®️」のメソッドを構築し、様々な医療機関で、多数の患者様とのマンツーマンでのセッションを行っています。また、病院にアーティストと制作する「ホスピタルアート」のディレクションや、市中のギャラリーでの「ホスピタルアートinギャラリー」を企画開催では、医療へのアートの可能性を発信しながら、医療関係者、市民、アーティストが交流できる機会をもうけています。
これらの実践を重ねるほどに、「色やアート」は、患者様に能動的なアクションやコミュニケーションをもたらし、病院側から患者様への気持ちを代弁しつつ、新しいケアを担えるものだと感じています。 医療や福祉の分野に向けた「色やアート」の役立ちを広げられるよう、これからも活動を更新し続けたいと思っています。
経歴
2000年代:初めて「ホスピタルアート」という言葉を知る
2013〜 医療に向けての色彩の有効活用を思い立ち、実現に向けての学びを広げる
2013年:第1回ホスピタルアートオブザイヤー最優秀賞受賞「青い小鳥の冒険」
2017年:任意団体 ひといろプロジェクトを発足
2017年:医療機関の小児病棟でのワークショップを開始(以降現在に至るまで継続中)
2017年:医療に特化した色彩活用『リハビリカラー®️」のメソッドを構築
2018年:リハビリカラー®️商標登録
2018年:がんサロンでのリハビリカラーセッション開始(以降現在に至るまで継続中)
2018年:ホスピタルアート 東大寺福祉療育病院 他
2018年:パープルデー大阪 会場アートで参加(毎年1回開催)
2018年:ホスピタルアートinギャラリー I 企画、開催(2019年には II 開催)
2019年:てんかんをめぐるアート展2019アートディレクション(第53回日本てんかん学会学術集会と連携)
2020年:アートミーツケア学会にて実践発表「自然の色を病院にひろげる染色によるアートの試み」
2020年:なごやヘルスケアアートウィークにて研究発表「医療における色のちからアートのちから」