地域性からストーリーを紡ぐアート

東大寺福祉療育病院 しょち室

東大寺福祉療育病院の、しょち室と病棟中廊下の窓ガラスの2カ所に作品を設置

作品には、奈良の美しい植物や、古くから伝わる霊獣「花しか」のストーリーなどを展開しています。


治療を良い方向にみちびく、花鹿のいるしょち

 もう1箇所は、しょち室の壁面。この病院は、東大寺に隣接した風光明媚な立地にあり、しょち室の窓からは、よく虹が見られるそうです。その地域性に合うストーリーを広げつつ、緊張がなごむデザインを目指しました。以前から注目していた森本怜華さんの「花鹿」の絵が浮かび導入が決まりました。「花鹿」とは正倉院文様の一つで、角が花になっている鹿で、想像上の霊獣です。縁起の良い図柄であることから、「治療を良い方向に導く」シンボルに。表情は小児向けにアレンジしました。背景には病院からのリクエストで、東大寺の鴟尾(しび)や虹を書き込み、地域性をとりいれました。また、やや黄傾向が強い環境色とのバランスをとり、調整を重ね、色彩調和を図りました。

ホスピタルアート設置、その後

 

 しょち室の壁面には、絵を貼ってすぐに、お子様が駆け寄ってきて触ってくれるなど、うれしい反応がありました。後日のアンケート結果からは、「処置室が明るく見えた」「色合いが優しいので、穏やかな気分になる」とのお声をいただき、3m²に満たない小さな作品が、不安な気持ちで治療に向かうお子様たちの、しょち室へ印象を変えられた様子をご回答にいただけました。

 

 

アーティストの声

 病院見学の際に、処置室では「子どもが大きな声で泣くこともある」とお聞きして、ショックを受けました。少しでも気が紛れるものが作れたらと、心を込めて制作させていただきました。完成後には嬉しいお声をいただき、作り手冥利に尽きる経験となりました。これからもお子様たちや、病院の皆様に親しんでいただけるものになればと願っています。(絵・デザイン担当:森本怜華)

 

 


作品情報

場所

 東大寺福祉療育病院

 病棟内しょち室

タイトル

 虹をかける花鹿

制作

  • 森本怜華(絵、デザイン)/ *病院の方々による葉のステンシルも使用
  • 川西 真寿実(ディレクション)

特記事項

公益財団法人ドナルド・マクドナルドハウス・チャリティーズ・ ジャパンのボランティア活動助成金によるものです。


参加者アンケート

※良い/やや良い/普通/やや悪い/悪い で回答

 ●花鹿のいるしょち室 回答者:50名

 

良い/やや良い

処置室の第一印象はいかがでしたか? 82%
内容やイメージは場に合っていましたか? 76%
色の印象はいかがでしょうか? 80%
患者さんの緊張や不安をやわらげるのにお役に立てていただけそうでしょうか? 74%
稼働中の医療現場へのアートを用いた改善策は有効だと思われますか? 88%

※良い/やや良い/普通/やや悪い/悪い で回答

●作品全体へのお声(抜粋)

  • 緊張なし。のびのびとしている感じがある。(義肢装具士)
  • 通りすがりに見たのですが、絵に触れている姿を見かけました(MT)
  • 壁がアートされてきれいになった事で、その他の場所も掃除が行き届くようになった。(その他) 
  • 楽しそうな会話が聞こえてきました。(看護助手)
  • 殺風景な病院、色の少ない院内の中に、優しい色合いがたくさんあるのはほっとするというか、 目が喜ぶというか、優しい気持ちになれると思います。(MT)